働き方改革と働かせ方改革
働き方改革と言えば、社会人なら誰しもが耳にしたキーワードだろう。この政府が提示した「働き方改革」について自分の考えを纏めてみた。
一言で言えば「働き方改革と働かせ方改革」の両輪が必要で、特に後者の方が軽視されがちだなと、自分の職場環境を振り返って思うのである。働き方改革という言葉はどうしても「個人の問題」に行きやすく、その為の環境づくりに対して無視されてしまい、うまくいかないと、結局は「個人の問題」として処理されてしまう。例えば「本当は早く帰りたいのに周りの雰囲気が……。」という定時退勤できない空気感は管理者側の「働かせ方」を改革しなければダメなのである。
自分なりの働かせ方改革
チームを束ねる身として、「働き方改革」だけでなく、「働かせ方改革」を考えてみた。主に次のような観点から見直してみた
- 工数見積もり
- 進捗管理
- メンバー育成
工数見積もりの改革
これは単純に1ヶ月の1人当たりに掛けられる時間を減らして見積もるようにした。例えば、今思い返せばおかしな話だが、以前は工数の見積もり段階で1ヶ月の1人辺りの時間を「残業込み」にしていた風潮を見直した。結果的に7時間×19日(1日年休とる想定)ぐらいで見積もるようにして、この限られた時間の中でパフォーマンスを維持する方法についてみんなで考えるようにした。もしかしたら一時的に生み出す価値の総量は減るのかもしれないが、後述する育成の観点からすぐに挽回できるのではないかと考えるようになった。
ここで重要なのは、いくらメンバー個人が「働き方改革」を考えて「残業時間減らします」と言っても、今やっている案件の工数見積もりが「残業前提」になっていたら破綻してしまうので、管理者側の施策も同時に考える必要があるという点だ。
そして、見積もりで想定時間を減らしたら、チームメンバーもそれを目指すように仕向け、結果的に残業がほとんどないチーム運営になるように管理者は気を配る。ここで思わぬ外圧が現れる。「同調圧力」だ。
「周りが忙しいからお前も」という圧力にはガン無視。抵抗することすら時間の無駄だから。でも、「どうやったら楽できるか一緒に考えよう」と言われれば喜んで協力したい。
— kuroyan (@kuroyan_insight) December 1, 2017
周りが残業して頑張っているから、空いているんだったら残業してでも他の作業やれ、という類の圧力が、定期的にやってくる。ここで管理者側は上手くブロックできるようにしなければならない。仮に「自分のところだけ上手く行けば良いと思っているのか」と問われれば、「では周りの困っている人達に対しても、同様な施策をしてみてもいいでしょうか?」と協力をアピールするのも手だ。
進捗管理の改革
チーム内では極力この進捗に関する情報を「ノーコスト」で収集できるような仕組みにしていく必要があると考える。日々の予定・実績を定量的に報告させるのは、ハッキリ言って愚の骨頂だ。
過去に日々の定量報告をやっていた環境をいくつか見たことがあったが、残念ながら上手くいったケースを見たことがない。一見うまくいったようなプロジェクトについても、後から関係者に聞いてみたら「如何に上長から突っ込まれないようにするか」という無駄な労力を使って「綺麗な情報」に捏造していたという。また、うまくいかなかったケースは「担当者の責任」として挽回策を考えさせ、上長が納得するまで、「本来やるべき作業以外のタスク」が積まれてしまうのである。これは完全に「足枷」のように効いてきて、さらに担当者の生産性を落とす結果になり、どんどん予定と実績が乖離していって、次なる挽回策を考えさせられるタスクが振られるのである。
メンバーの育成
目指してるのはプラスの循環。
チーム内の働き方多様性を認める→残業させない→各人にライフプランを考える余裕を与える→自律的な働き方ができる→成果を出そうと頑張る→周りが羨ましがる→有能な人がくる→チームパフォーマンスが上がる
— kuroyan (@kuroyan_insight) December 1, 2017
メンバーの育成に関しては、とにかく「時間的余裕の確保」これに尽きる。情報過多の社会の中では、上から一方的に学ぶべきものを押し付けるのではなく、本人の目指したいところを充分に考えさせて、自ら学びたい物を学んでいけるように仕向けることが大切だと自分は考える。会社特有の技術を身につけたとしても、万が一転職を視野に入れた場合、この技術が殆ど使えないということが充分にありえるからだ。
また、メンバーに対してプレッシャーを与えなければ行けない場面も出てくるだろう。いわゆる「無茶ぶり」の部類に入るのだが、自分の場合は「本当に未解決な課題に対してふる」ことを心がけている。いざとなったら自分も一緒に考えれば良いからだ。逆に言えば「自分は分かっているけど、担当者に分からせるための課題」みたいな類は課題の選び方が間違っているので注意したい。
エンジニアリングの本質は「未解決の課題をみんなで知恵出して解決していく」ことにあると思うので、答えが分かっている類の課題はさっさと「知っている人がやってしまう」のが一番だ。
周りがなんでもやってしまうと育たないのでは?と思うかもしれないが、自分は「時間的余裕を確保」した段階での個々人の余暇活動を信じたい。実際、あるメンバーを直接面倒見る機会があって、2年ぐらい「時間的余裕を確保」を意識して、負荷をかけないようにしたところ、彼は自ら不足していると感じているところを学び、今ではとある技術に関して後進に教えることができるレベルになった。
まずは働かせ方改革を
働き方改革を考える上で、ボトムアップで色々施策を実行できる環境は結構恵まれていると思う。しかし、そうでないパターンの場合は、どうしても管理者側からの「働かせ方改革」がしっかりしていないと、結局「残業するな、でもパフォーマンスは落とすな」という脅迫まがいな指示しかできなくなってしまうのである。
ちなみにこの手のハラスメントをする人は「まだ終電には早いな」といって残業を半ば強制していたタイプの人間と大して変わらない。
これ、以前は「まだ終電には早い」って言って残業を半ば強制した人が、こちらの論理にシフトしただけじゃないか説。
「残業するな」「いいから帰れ」 会社員の4割が“ジタハラ”に悩み 高橋書店の調査 – ITmedia NEWS https://t.co/qMTM5IrIBB
— kuroyan (@kuroyan_insight) November 27, 2017
もし、小さいながらもチームを運営している立場の方だったら、チームをどのようにして働かせたいのかを真剣に設計していただけると、「働き方改革」と呼ばれるものが幾分上手くいくのではないかと自分は思うのである。